【今のアドフラウド率ってどれくらい?】インターネット広告のリスク調査2023解説

Momentumブログ編集部
2024-04-16
目次

はじめに

アドベリフィケーション推進協議会レポート2023について解説

 2024年1月18日、Momentumが所属するアドベリフィケーション推進協議会から、「インターネット広告のリスク調査2023」を公開いたしました。本調査は、日本で利用されている広告プラットフォームから実際に広告配信を行い、アドベリフィケーションに関するスコアを計測したものです。つまり、「実際どれくらいリスクがあるのか」を調査したレポートになります。

 本記事は、ポイントだけ抜き出した簡単な解説を行っています。詳細は、実際のレポートをご確認ください。

調査概要

 調査概要は以下の通りです。

調査名称:インターネット広告リスク調査2023
調査期間:2023年10月6日~11月30日
調査方法:インターネット広告配信
対象プラットフォーム:日本国内で利用されている3サービス ※非公開
調査主体:株式会社電通デジタル・Momentum株式会社
計測:Integral Ad Science社
広告媒体費:300万円

 また、広告配信の設定については以下のようにしました。

アドベリフィケーションの認知拡大を目的に、アドベリフィケーションの概要をまとめた資料のダウンロードをコンバージョンポイントとして設定。ターゲティングは行わず、広くディスプレイ広告を配信した。

クリエイティブは以下の通り。

ランディングページ:https://campaign.m0mentum.co.jp/lp_adverification

バナー:リンク

ダウンロード資料:アドベリフィケーション完全ガイド

また、各入札戦略の配信期間は以下の通り。クリエイティブの更新はしなかった。

・10月6日〜10月29日:手動入札

・10月30日〜11月30日:自動入札(コンバージョン(以下、CV)しやすいユーザーへの最適配信)

調査のポイント

 現状の広告配信は全てシステム化しており、広告主や広告運用者も、実際の配信アルゴリズムを理解しているわけではありません。

そこで今回調査のポイントにすえたのは、「入札戦略によってアドベリフィケーションのスコアは変化するのか?」という点です。

「入札戦略」というと分かりづらいかもしれませんが、「各広告配信プラットフォームが用意している顧客獲得のための配信最適化のメニューを利用した場合、ブランドセーフティやアドフラウド率に変化はあるのか」、もっというと、「各プラットフォームの自動配信設定って安全なの?」ということです。

 レポート内では、2つの仮説を検証しています。

 1. CVしやすいがブランドリスクがある、もしくはIVT率が高いドメインへの配信が起こるかどうか

 2. 逆に、手動入札の時点からブロッキングを行っている場合、ブランド毀損リスク値およびIVT率の高いドメインへの配信は排除されるため、自動入札後も安全性の高い配信が可能なのではないか。

2018年実施のリスク調査との比較

まず、全体の結果から見ていきましょう。レポート内では2018年と2023年の計測結果を比較をしております。

2018年と2023年での配信プラットフォームにおけるアドベリフィケーショんスコアの変化

 オレンジ色の部分を見ていただければ、全体的には改善の傾向にあることがわかります。最も顕著なのはブランド棄損リスクです。ここ5年間で、アドネットワークとDSPの両方ともブランドセーフティ率・IVT率ともにリスクが低下しており、広告主にとって安全な配信がなされる環境が実現しています。

入札戦略によるアドベリフィケーションスコアの変化

 ただし、以下の通り、配信の方法次第ではそうではありません。

 この広告配信におけるブロッキング対策の実施は、配信プラットフォームの仕様に依存するため、プラットフォームAとCはブロッキングを行い、プラットフォームBはブロッキングを行っておりません。

 ブロッキングでは、Botなどによるクリックは元々の広告に紐づいているブランドLPにはリンクしない仕組みになっているため、自動入札におけるサイト来訪やCVユーザーとしての機械学習の対象からBotなどを除外することが可能です。

その結果、ブロッキングの有無によってもアドベリフィケーションのスコアに違いが見られました

ブロッキングを行ったプラットフォームAについて

 まず、ブロッキングを行ったプラットフォームAのアドベリフィケーションスコアの推移は以下の通りです。 プラットフォームAアトベリフィケーションスコア推移

 手動配信から自動配信に切り替えたことにより、ブランド棄損リスク率とIVT率が低下しています。これは、1-4週目でインプレッション重視の配信時にブロッキングを行っていたことにより、コンバージョン最適化を行った5週目以降でもより安全なところに配信が行われたことを示しています。ただし、ビューアビリティ率については低下しています。コンバージョン獲得できれば広告が見られている/見られていない、ということの優先順位は下がるため、実際の広告配信においてはそこまで問題がないと思われます。

 さて、ただし最も重要なのは、この広告配信が広告主の目的を達成したかどうか、です。この場合、資料ダウンロード(顧客獲得)が何件発生したか、にあたります。当然ですが、いくらブランドセーフティだろうと、顧客獲得がなされていなければ意味がありません。

 コンバージョン数の推移がこちらです。 

プラットフォームAの広告配信結果

 自動入札に切り替えた後の方が、顧客が獲得できています。刈り取りに重点をおいた結果、CPMとCPCは悪化していますが、これを許容できるかどうかは、広告主が設定しているKPIやCPA次第です。

ブロッキングを行っていないプラットフォームB

 では同様に、ブロッキングを行っていないプラットフォームBを見ていきましょう。まずはアドベリフィケーションスコアの推移から。

ブロッキングを行っていないプラットフォームBのアドベリフィケーショんスコア推移

 プラットフォームAと異なり、手動入札から自動入札に切り替えた結果、アドベリフィケーションスコアが悪化しています。どういうことでしょうか。先に、CV数についても見ておきましょう。

プラットフォームB広告配信結果

 自動入札切り替え後、顕著にコンバージョン数が増えています。ただし、注意が必要です。

数字上、CV数は大幅に伸びたように思われますが、注意が必要です。CV合計682件のうち、400件以上が1つのサイトで発生していました。また2番目に多いサイトも140件を超えています(3番目に多いサイトは20件)。

この上位2つのサイトは同じ会社が運営しており、特に400件以上CVが発生したサイトのSIVT率は5%を超えていました。今回の検証では「CVしたトラフィックがSIVTかどうか」をチェックすることはできませんでしたが、明らかに異常値であり、広告詐欺の可能性が高いと思われます。

 さらにどちらのサイトも代り映えのないコンテンツがテンプレート化されたデザインで、MFAサイト(※4)に該当すると考えられます。MFAサイトはトラフィックを有料で稼いでくるため大量のインプレッションを獲得しやすく、自動入札に伴うインプレッション数の増加の裏には、そうした質の悪い面への掲載も含まれている可能性があります。

 つまり、ブロッキングしていない状態でコンバージョン最適化をかけた場合、コンバージョンを発生させるアドフラウドサイトに配信が偏ってしまったのではないか、ということです。

 もちろん、こちらの結果は今回観測した1例にすぎず、全ての広告配信がこうなるわけではありません。ただし、プラットフォームBのコンバージョン500件以上が広告詐欺だった場合、どれくらいの費用が無駄になるのでしょうか?今回のCPCは一桁円でしたが、実際はそうでない場合の方が多いと思われます。

 そうならないために、アドベリフィケーション対策をしておきましょう!

インターネット広告のリスク調査2023結果のまとめ

 最後に調査結果のまとめを掲載しておきます。

広告配信環境は良くなってきている

 2018年と比較すると、ブランド毀損リスク値およびIVT率は改善傾向にあり、広告主にとって安全・安心な広告配信環境になってきていると言えます。一概に理由を挙げることはできませんが、アドベリフィケーション自体の認知率および対策実施率は向上しており、プラットフォーマー側の対策も進んでいると思われます。広告主サイドもプラットフォーム選定の基準にリスク対策が入ってきており、デマンドとサプライの両方で意識が高まってきています。

アドベリフィケーション対策を行うことにより、自動入札時のリスク低減につながる

 まず、プラットフォームAとBの比較により、入札戦略の切り替えに伴うリスクが発見されました。ブロッキングを行っていたプラットフォームAは、自動入札切り替え後にブランド毀損リスク値とIVT率が改善しつつ、CV数を増加させることができました。逆に、ブロッキングを行っていないプラットフォームBでは、自動入札切り替え後にアドベリフィケーション指標が悪化するだけなく、実際に広告詐欺と思われるCVが多数発生してしまいました。

 MFAサイトへの掲載リスクなどを踏まえても、アドベリフィケーションツールを用いた対策の重要性がうかがえます。

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