方法とは?
ヒントを得る
初めに
2022年6月29日、消費者庁より、『「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改正案及び「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部改定案に関する意見募集の結果の公示について』が公表されました。
上記改正案は、景品表示法によって禁止される不当表示を防止するため、事業者が講ずべき措置に関する指針を改正するものです。今回の改正では、特にアフィリエイト広告を表示する際の注意点が詳細に明記されました。
本記事では、改正前後の「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(2014年版と2022年版)を比較し、改正されたポイントについて解説します。アフィリエイト広告関連事業者の方は、ぜひご一読ください。
※記事監修 ゆら総合法律事務所 代表弁護士 阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」とは
そもそも...?
まず、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」とはそもそもなんでしょうか?
本指針は、不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号。以下「景品表示法」という。)第7条第1項に規定する事業者が景品表示法で規制される不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するために講ずべき措置に関して、同条第2項の規定に基づき事業者が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めるものである。
出典:事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針「第1 はじめに」
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_220629_04.pdf
※以下、引用は全て同じ出典になるため省きます。
景品表示法では、一般消費者を保護する観点から、事業者による「優良誤認表示」や「有利誤認表示」などの不当表示が禁止されています。
●優良誤認表示:商品やサービスの内容(品質など)が、実際のものまたは競合他社のものよりも著しく優良であると誤認させるような表示
●有利誤認表示:商品やサービスの取引条件(価格など)が、実際のものまたは競合他社のものよりも著しく有利であると誤認させるような表示
自己の供給する商品やサービスについて、これらの不当表示を防止するため、事業者は必要な措置を講ずる義務を負っています(景品表示法26条1項)。同指針は、不当表示の防止に関する措置を検討する際、事業者が考慮すべき事項をまとめたものです。
なお、本記事は主に広告表示について検討しますが、ここでいう「表示」にはいわゆる広告だけではなく、商品パッケージなども含まれます。
対象になる事業者は?
では、どのような事業者が対象になるのでしょうか?
同指針の適用対象は、「景品類の提供若しくは自己の供給する商品又は役務についての一般消費者向けの表示(以下「表示等」という。)をする事業者に対して必要な措置を講じることを求めるもの」です。
商品・サービスの販売に関しては、あくまでも自分で供給する事業者だけが適用対象となります。したがって、LPを作るだけの制作会社や広告代理店、パッケージを印刷するだけの会社など、自分で商品やサービスの供給者ではない事業者は対象外です。
なお、2022年改正版では下記の記載が追加されています。
しかし、取引関係事業者が、当該表示等を行う事業者から当該表示等の作成を委ねられる場合には、当該表示等を行う事業者は、自らの措置の実効性が確保できるよう、取引関係事業者に対し、自らの措置についての理解を求め、取引関係事業者が作成する表示等が不当表示等に該当することのないよう指示することが求められる。
同指針が直接適用されない取引関係事業者(制作会社、広告会社、印刷会社など)の行為によっても、消費者を誤認させる不適切な広告表示がなされるケースがあります。こうした事態が生じないように、広告内容を決定する販売事業者が、取引関係事業者に対する適切な監督を行うべき旨が明記されました。
上記の追記は、アフィリエイト広告主のアフィリエイターに対する監督責任にも関係します(詳しくは後述)。
事業者が講ずべき措置とは?
事業者が講ずべき7つ(+α)の措置
この告示には具体的に7つ、事業者が講じるべき措置が記されています。+αは一旦置いておき、簡単に列挙します。
1.景品表示法の考え方の周知・啓発
2.法令遵守の方針等の明確化
3.表示等に関する情報の確認
4.表示等に関する情報の共有
5.表示等を管理するために担当者等を定めること
6.表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
7.不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
以下、この中から、改正されたポイントを読んでいきます。
1.景品表示法の考え方の周知・啓発
「1.景品表示法の考え方の周知・啓発」は、景品表示法の考え方を従業員や役員等の関係者に周知することが求められています。2022年の改正では、下記の記述が追加になっています。
また、一般的に事業者が行う表示等の作成に当該事業者以外の複数の事業者が関係する場合、そうでない場合に比べて、景品表示法の考え方を関係者間で共有することが困難になり、結果的に不当表示等が生じる可能性が高くなることも踏まえ、事業者が表示等の作成を他の事業者に委ねる場合、当該他の事業者に対しても、その業務に応じた周知・啓発を行うこと。
社内関係者の周知だけではなく、社外への周知に言及しています。例えばASPを通してアフィリエイターへ広告表示を依頼する場合、そのアフィリエイターへも景品表示法に関する研修を行ったり、ガイドラインを共有したりすることが求められます。
同趣旨の記載が「2.法令遵守の方針等の明確化」「4.表示等に関する情報の共有」にも追加されており、景品表示法を含めた基本的な法令を、取引先との関係でも周知・協力・遵守するよう求められています。
3.表示等に関する情報の確認
「3.表示等に関する情報の確認」では、事業者が下記2点について確認することを定めています。
(1)景品類を提供しようとする場合、違法とならない景品類の価額の最高額・総額・種
類・提供の方法等を、
(2)とりわけ、商品又は役務の長所や要点を一般消費者に訴求するために、その内容等
について積極的に表示を行う場合には、当該表示の根拠となる情報を
確認すること
特に広告表示との関係では、不当表示を防止する観点から(2)の内容が重要です。広告表示を行う事業者には、表示内容のエビデンスをきちんと確認することが求められます。
この後に、2022年版では、アフィリエイトプログラムに関する以下の文章が追記されています。
アフ ィリエイトプログラム(注4)を利用した広告を行うような業態では、当該広告を利用する事業者がアフィリエイター等の作成する表示等を確認することが必要となる場合があることに留意する必要がある。
(注4)「アフィリエイトプログラム」とは、インターネットを用いた広告手法の一つである(以下広告される商品又は役務を供給する事業者を「広告主」と、広告を掲載するウェブサイトを「アフィリエイトサイト」と、アフィリエイトサイトを運営する者を「アフィリエイター」という。)。アフィリエイトプログラムのビジネスモデルは、比較サイト、ポイントサイト、ブログその他のウェブサイトの運営者等が当該サイト等に当該運営者等以外の者が供給する商品又は役務のバナー広告、商品画像リンク及びテキストリンク等を掲載し、当該サイト等を閲覧した者がバナー広告、商品画像リンク及びテキストリンク等をクリックしたり、バナー広告、商品画像リンク及びテキストリンク等を通じて広告主のサイトにアクセスして広告主の商品又は役務を購入したり、購入の申込みを行ったりした場合等、あらかじめ定められた条件に従って、アフィリエイターに対して、広告主から成功報酬が支払われるものであるとされている(注5)。
(注5)アフィリエイターが自らのアフィリエイトサイトに単にアフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者のウェブサイトのURLを添付するだけなど、当該事業者の商品又は役務の内容や取引条件についての詳細な表示を行わないようなアフィリエイトプログラムを利用した広告については、通常、不当表示等が発生することはないと考えられる。また、アフィリエイターの表示であっても、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にあるものについては、通常、広告主が表示内容の決定に関与したとされることはないと考えられる。
前述のとおり、広告表示を行う事業者(広告主)には、委託先の取引関係事業者が作成する広告表示が不当表示に該当することのないように指示を行うことが求められます。
アフィリエイト広告の場合、アフィリエイターが取引関係事業者に該当します。そのため広告主は、アフィリエイト広告の内容につき、不当表示に該当しないかを適宜の方法で確認・監督すべき場合がある旨が明記されました。
なおアフィリエイト広告には、アフィリエイターが独自に広告表現を考案し、自ら運営するブログやサイトに掲載するケースが多いという特徴があります。
個々のアフィリエイターによる独自の広告表現については、広告主が逐一確認することは困難です。そのため、広告主とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが一切行われていない場合などには、広告主が景品表示法上の責任を負わない旨が明記されています(注5)。
5.表示等を管理するために担当者等を定めること
「5.表示等を管理するために担当者等を定めること」では、事業者に対して広告表示に関する社内担当者を定めることを求めています。社内担当者は適切な権限を有し、かつ景品表示法に関する一定の知識の習得に努める事が必要です。2022年版では、下記の2点が追記されています。
(2)表示等の作成を他の事業者に委ねる場合は、表示等管理担当者が当該他の事業者が作成する表示等に関して指示・確認権限を有していること。
(5)表示等管理担当者を社内等(表示等の作成を他の事業者に委ねる場合は当該他の事業者も含む。)において周知する方法が確立していること。
これまでみてきた通り、表示等の作成を関係取引先に依頼する場合でも、適切な権限を持つ担当者を設定し、取引先に周知しておくことが大切になります。
6.表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
「6.表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること」では、すでに掲載が終了した広告表示などを念頭に置いて、広告内容が適切であったかどうかを事後的に検証できるように、事業者に対して資料の保管等を行うことを求めています。
2022年版では、「また、表示等の作成を他の事業者に委ねる場合であっても同様の措置を採ること」という記載が追加されています。他の箇所と同様、取引関係事業者に対して広告表示を委託する場合に、広告主が適切な確認・監督を行うことを求める趣旨です。
7 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
「7. 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応」では、不当表示が判明した場合に、事業者が取るべき対応として以下3点を定めています。
(1)当該事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
(2)前記(1)における事実確認に即して、不当表示等による一般消費者の誤認排除を迅速かつ適正に行うこと。
(3)再発防止に向けた措置を講じること。
また、上記の措置は、事業者が表示等の作成を他の事業者に委ねた場合の表示等において当該事案が発生した場合も含む。
最後の「また、上記の措置は、事業者が表示等の作成を他の事業者に委ねた場合の表示等にお いて当該事案が発生した場合も含む」が追記された箇所になります。他の箇所と同様、取引関係事業者に対して広告表示を委託する際の適切な確認・監督を求める趣旨です。
管理上の措置の具体的な事例って?
掲載されている事例は倍増
さて、ここまで指針本文の改正内容を見てきましたが、同指針には別添として、上記の1~7に関連して、事業者が講ずべき措置の具体例が載っています。紙幅はこちらの別添の方が多く割かれており、2014年版と比較すると、2022年版ではボリュームが倍増しています(6ページ→13ページ)。
追記されたポイント
倍増の主な原因は、アフィリエイトプログラムの事例が追加されているためです。その中でも「8 前記1から7まで以外の措置の例」の「(1)アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示」が追加された点が注目されます。
ここでは、アフィリエイト広告の望ましい表示方法として、以下の5点に関連した対応例が挙げられています。
ア アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい文言
イ アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示位置
ウ アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示の大きさ
エ アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示の色
オ アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関するその他の望ましい対応
「ア アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい文言」では、掲載サイトに「広告」や「PR」という文言を追加したうえで、商品やサービスを販売する事業者の具体的な名称を記載するなどの対応が求められています。
背景として、これまで商品やサービスに関する体験談や前後比較画像、口コミなどが記載されていた場合、それが企業が報酬を支払って作成してもらっている広告なのか、広告ではない通常の記事なのか、一般消費者には分かりづらい状態にありました。そのような状態を解消するために、アフィリエイト広告であることをわかるようにする措置が求められています。
「イ~オ」では、アフィリエイト広告であることがわかるような表示を行う際の適切な方法が列挙されています。具体的には、「広告」や「PR」という文言や広告主の名称を、きちんとわかりやすい場所に、わかりやすい大きさで、わかりやすい色で明示しなければなりません。ただ、どのような表示位置、大きさ、色などが適切であるかは、個々の事情によって異なる点に注意が必要です。同指針ではイラスト付きで紹介されているので、見てみましょう。
▼望ましい位置
▼望ましい大きさ
▼望ましい色
もちろん、全てこの通りにしなければならないわけではなく、あくまで一例であることにご留意ください。
改正ポイントまとめ
本記事の内容をまとめます。
1.広告を含む、商品やサービスに関する「表示」に関して、取引関係事業者に対する監督を含む事業者(広告主)の管理責任が明確になった。
2.特にアフィリエイト広告を行う場合、きちんと社内担当者を設定し、アフィリエイターやASPによる実際の表示を確認・コントロールできる体制を整えなければならない。
3.アフィリエイトプログラムを利用する場合、アフィリエイトサイトは、その記事が広告であることが一般消費者に分かるような表記(「広告」「PR」などの文言や、広告主の名称)を明確に行わなければならない。
同指針の改正により、これまで以上に、アフィリエイト広告主や委託を受ける広告代理店及びASPの業務負担が増える可能性があります。Momentumでは、アフィリエイトサイトの解析サービスや、ブランドセーフティメニューを提供しています。管理コストや工数にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※引用元:本記事の引用元は全て以下によります。
出典:事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_220629_04.pdf
※記事監修 ゆら総合法律事務所 代表弁護士 阿部 由羅
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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