WebブラウザからIPアドレスやOSなどの情報を取得し、Webサイトの訪問ユーザーをある程度特定する「サードパーティクッキー(3rd Party Cookie)」は、ログインシステムやWeb広告のトラッキングなどさまざまな面に役立ちます。
一方で、「ユーザーのプライバシーが保護されない」との観点から、EU圏を始めとして3rd Party Cookieに対する規制が強まっているのも事実です。
AppleやGoogleも同じような規制を強める方針でしたが、近年Googleは予定を一部変更し、「グーグルクローム(Google Chrome)」における3rd Party Cookie廃止の撤回・方向転換を発表しました。
この記事では、Googleがなぜ3rd Party Cookie廃止を撤回したのか、撤回理由からWeb広告マーケティングへの影響について解説します。デジタルマーケティングの転換期についても触れていますので、あわせてご参照ください。
この記事で分かること
- 3rd Party Cookieの廃止が撤回された背景
- 3rd Party Cookieが問題視される理由
- Web広告における今後の向き合い方
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Google Chromeでの3rd Party Cookie廃止の撤回を発表
現地時間7月22日、GoogleはChromeブラウザの3rd Party Cookieの制限に関する方針を転換し、「当初予定していた完全廃止を撤回」しました。完全廃止を撤回した背景には、「関係者に膨大な移行作業が求められること」「広告業界全体への影響力が大きいこと」などが挙げられます。
Googleは当初2023年に3rd Party Cookieを廃止する予定でしたが、広告業界やWebサイト運営者に大きな影響を与えるため、代替手法として「プライバシーサンドボックス」が開発されていました。プライバシーサンドボックスとは、サーバーではなくオンデバイスで管理され、個人ではなくグループ群でターゲットを判断する識別タグのようなものです。
一定のプライバシーは確保できるものの、業界からの反発や開発の難航により導入が遅れるなど、プライバシーサンドボックスはさまざまな課題を抱えていました。そこで、最終的にGoogleは「Chromeでの3rd Party Cookie利用廃止の予定を撤回する」と発表したのです。
今後は3rd Party Cookieを採用しつつも、ユーザーが個々に選択できる新しい機能を搭載する方向へアプローチすると述べています。
- 3rd Party Cookie廃止の代わりとしていたプライバシーサンドボックスの開発が難航
- 広告業界全体への影響も大きく、3rd Party Cookie廃止は一旦取りやめ
- ユーザー選択式の機能をChromeに追加したり、IP保護機能を追加したりと今後はプライバシー強化の方針
- プライバシーサンドボックスの開発は依然継続中
3rd Party Cookieは何が問題なのか
廃止は取りやめになったものの、3rd Party Cookieにはいくつかの問題があり、依然として規制が残っているのも事実です。
3rd Party Cookieが問題視される背景には、「ユーザーのプライバシー侵害」といった点が挙げられます。3rd Party Cookieとは、ユーザーが訪問したWebサイトとは異なる第三者によって発行されるCookieで、Webサイトを横断してユーザーのオンライン行動を追跡できます。
つまり、広告配信事業者やデータ分析会社などが複数のWebサイトに追跡用のコードを埋め込むことで、ユーザーの閲覧履歴や興味関心を収集できる仕組みです。ECサイトでちらりと見た商品が、別のSNS上で広告として表示される、といった経験をされた方もいるかもしれません。
しかし、3rd Party Cookieはその仕組み上、特定個人のプロファイルが本人の知らないうちに推定・蓄積されます。そのため、「自分自身のデータがどのように利用・共有されるのか不透明」「プライバシー保護や匿名性の観点」といった懸念点から、3rd Party Cookieの規制が進むようになったのです。
≫≫ 3rd Party Cookieの使用制限とアドベリフィケーション
現状のCookieに関する規制全容
3rd Party Cookieは、Googleが提供する「Chrome」「Android」において全般的に利用が可能です。
3rd Party Cookieの利用について |
iOS(iPhone) |
macOS |
Android |
Windows |
Chrome |
不可 |
ユーザー同意で利用可能 |
ユーザー同意で利用可能 |
ユーザー同意で利用可能 |
Safari |
不可 |
不可 |
不可 |
不可 |
Edge |
利用可能 (廃止予定) |
利用可能 |
利用可能 |
利用可能 (廃止予定) |
一方で、Googleのような広告収益に依存しないAppleはすでにiOS、Safariで3rd Party Cookieの利用を取りやめ。
また、Microsoftが提供するEdgeも2024年度中に3rd Party Cookieを廃止するテストを実施しています。ただし、WindowsにおけるChromeは未だにユーザー同意の元、3rd Party Cookieの利用が可能です。
Googleの方針変更にどのように向き合うべきか
Googleの方針変更は、デジタルマーケティング戦略に大きな影響を与えます。そのため、3rd Party Cookieに依存しない新たな戦略の構築は急務です。ここでは、Googleの方針変更にどのように向き合うべきか解説します。
- 3rd Party Cookieに依存しないシステムを構築する
- ユーザーの同意を得るための仕組みを構築する
- 顧客接点を増やす
3rd Party Cookieに依存しないシステムを構築する
3rd Party Cookieの規制強化は世界的な潮流であり、多くのブラウザで既に制限が導入されています。個人情報保護の重要性が高まり、ユーザーのオンライン行動追跡に対する規制が強化されている流れは止められません。たとえば、GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、個人情報保護に関する法律が世界各国で施行されています。そのため、3rd Party Cookieに依存しないシステムを構築することが急務です。
具体的には、「1st Party Cookieの活用」「コンテキストターゲティング」「プライバシーサンドボックスへの対応」などが挙げられます。ユーザーのプライバシーを尊重しながら効果的なマーケティング活動を実施すれば、規制の影響を受けにくくなると言えます。
特に、1st Party Cookieはユーザーの同意を得た上で、Webサイトのパーソナライゼーションや顧客分析を行えるのが特徴です。ユーザーから正式な同意を得られる1st Party Cookieなら、今後も規制の対象にはなりにくいと言えます。いずれにしろ、3rd Party Cookieの規制が進みつつある昨今では、新たな技術や手法を積極的に導入していく必要があります。
≫≫ 【2024年版】ファーストパーティCookieとサードパーティCookieの違いを解説
≫≫ ファーストパーティCookieとは?サードパーティCookie規制と2つの対策方法を解説
ユーザーの同意を得るための仕組みを構築する
3rd Party Cookieの廃止が進む背景に、ユーザーの同意なく勝手に情報が収集されるプライバシー侵害の観点が挙げられます。そのため、ユーザーの同意を得たうえで情報を収集する仕組みづくりが大切です。
たとえば、1st Party CookieではCookieバナーを表示し、ユーザーにCookieの利用に同意するか拒否するかを選択させることでプライバシーを尊重した情報収集が行えます。必要に応じて同意管理ツールを利用するなど、効率的な運用を行える仕組みづくりが重要です。
顧客接点を増やす
顧客接点とは、企業と顧客が接する機会のことを指します。顧客接点を増やすことは、3rd Party Cookie規制に対応するだけでなく、顧客とのエンゲージメントを高め、長期的な関係を構築するためにも重要です。
顧客との接点を増やすことで、顧客のニーズや行動をより深く理解し、パーソナライズされたサービスを提供できるようになります。つまり、第三者のWebサイトから情報を取得するのではなく、自社メディア・企業から直接的に顧客と触れ合える環境づくりが大切です。
顧客接点を増やす手法には、「商品購入から利用〜継続・再購入を促すカスタマージャーニーの構築」や、「SEO施策・SNSマーケティングによるWebメディアの露出」が挙げられます。
まとめ|PMAXキャンペーンの配信リスク対策も必須
Googleの方針変更は、デジタルマーケティングの転換期を意味します。企業は、3rd Party Cookieに依存しない新たな戦略を構築し、プライバシー保護を重視したマーケティング活動を行わなければなりません。
しかし、広告配信において、Cookie規制への対応だけではリスクが拭えないのも事実です。不正な広告表示や無効なインプレッションといったアドフラウド・ビューアビリティ対策を怠れば、広告効果を低下させるだけでなく、ブランドイメージを損なう可能性もあります。
そのため、広告配信ではアドベリフィケーションツールなどを活用して、広告の品質と効果を検証する取り組みが大切です。Momentumでは、Web広告配信におけるさまざまなリスク対策や、広告配信の健全化を支援するサービスを提供しております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
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