ROASとは?計算方法や他指標との違い、メリット、改善策を総解説

恩田基輝
2023-03-02
目次

 

 Web広告の費用が効果に見合うものかどうかを確認するには、どのような方法が有効でしょうか?自社広告の効果測定に適した指標を選び、広告の運用改善策を立案する作業は、決して容易ではありません。複数の指標の特徴を理解した上で、広告の用途や目的に合った指標を選ぶ必要があります。ROASは、Web広告の費用対効果を測定する指標です。ROASを用いることによって、広告の運用改善に向けた課題を絞り込むことができます。

 本記事では、ROASの計算方法や他の指標との違い、利用するメリット・デメリット、ROASを改善させるポイント、ROAS改善に役立つツールなどについて解説します。

ROASとは

 

 ROASの定義と計算式、目標設定方法について説明します。

ROASの定義

 ROAS(Return On Advertising Spend)は、広告の費用対効果を測定する指標です。ROASを使用すると、広告費に対して達成できた売上を確認でき、広告費の回収率を知ることができます。広告の運用改善に役立つ判断材料のひとつです。

ROASの計算式

 ROASの算出には、以下の計算式を用います。

・ROAS(%) = 売上金額 ÷ 広告費 × 100

 例えば、10万円の費用をかけた広告によって20万円の売上を得た際のROASは、20÷10×100で計算して200%になります。ROASが200%であれば、広告費1円当たり2円の売上を得たことがわかります。

ROASの目標設定方法

 ROASの目標を設定する際には、一般的に「損益分岐点のROAS」と「目標とするROAS」の2つを使用します。例えば、原価率50%の商品では、売上1,000円当たりの利益は500円です。このケースでは広告費が500円を超えると、利益は発生しないため、損得分岐点のROASは200%となります。
 損得分岐点のROASに、残したい利益を加えて計算することで、目標とするROASが設定できます。上に挙げた例で500円の利益を残すには、1,500円の売上が必要です。このケースで目標とするROASは、300%となります。

ROASとROI・CPAの違い

 

 ROASと同様に広告の効果測定に用いられる指標には、主にROIとCPAの2種類があります。ROASとROI、CPAの相違点や関連性について、解説します。

ROAS・ROI・CPAの主な相違点

 広告の効果測定に用いる代表的な指標には、ROASとROI、CPAの3種類があります。3つの指標の相違点を、以下の表にまとめました。

指標名

測定項目

計算式

主な目的

ROAS

広告費1円当たりの売上額

売上 ÷ 広告費 × 100(%)

広告運用の最適化

ROI

投資した費用の利益率

利益 ÷ 広告費 × 100(%)

広告の収益性測定・改善

CPA

コンバージョン1件を得るために必要な広告費

広告費÷コンバージョン数

運用型広告の改善

ROASとROIの違いと関連性

 ROI(Return On Investment)は、広告費に対して得た利益を測定する指標です。ROASと同様に、広告の費用対効果を計るために用いられます。ROASが売上を基準とするのに対して、ROIが基準にするのは広告によって得た利益です。ROIは測定時の利益額で算出するため、主に短期指標として使われます。ROASとROIでは、費用対効果が高い広告ほど数値が高くなります。

ROASとCPAの違いと関連性

 CPA(Cost Per Acquisition)は、1件のコンバージョンを得るためにかかった広告費を測定する指標です。CPAは、コンバージョン数を基準にして算出するため、発生した売上や利益によって数値は変動しません。主に問い合わせや資料請求といったコンバージョンの費用対効果を測定する際に使用されます。CPAは、コンバージョン1件当たりの広告費を示すため、費用対効果が高い広告ほど数値が低くなります。

ROASを広告運用の指標に用いる3つのメリット

 

 ROASを広告運用の効果測定に使用するメリットには、主に以下の3つがあります。

  1. 広告の売上への貢献度を数値で測定できる
  2. 広告運用の問題点の絞り込みに役立つ
  3. 算出に必要なデータを入手しやすい

 それぞれのメリットについて、説明します。

1. 広告の売上への貢献度を数値で測定できる

 ROASによって、自社広告の売上への貢献度を数値で測定できます。ROASを参考にして広告の予算配分や配信方法を検討すれば、広告戦略の立案や運用改善を効率よく実施できます。

2. 広告運用の問題点の絞り込みに役立つ

 ROASを測定すると、広告運用の問題点が具体的に絞り込めます。ROASが低い広告に対して、文章表現やデザインといったクリエイティブの改善、キーワードの見直しなどを行うことによって、広告の効果向上が見込めます。

3. 算出に必要なデータを入手しやすい

 ROASを算出する際に用いる数値は、広告費や過去の売上といった入手しやすいものです。ROASを活用すれば、新たにデータを収集する手間や時間を省いて、広告の運用改善のための判断材料を得ることができます。

ROASを広告運用の指標に用いる2つのデメリット

 

 ROASを広告の効果測定に使用する主なデメリットには、以下の2点があります。

  1. 利益の測定ができない
  2. Web上で取引が完結しない商材には不向き

 各デメリットの概要と対応方法について、具体的に説明します。

1. 利益の測定ができない

 先にご紹介したとおり、ROASは広告の費用対効果を売上から算出する指標です。しかしROASが100%以上でも、利益が出ていないケースがあります。ROASに加えて、利益率で広告効果を算出するROIによる測定を定期的に実施することをおすすめします。

2. Web上で取引が完結しない商材には不向き

 Web上で取引が完結しない商材の広告は、ROASによる効果測定には不向きです。販売やサービス提供を実店舗で行う商品・サービスのWeb広告については、広告費と売上による効果測定は困難で、来店率や成約率を考慮した効果測定が有効です。資料請求や問い合わせといった売上が発生しないコンバージョンも、ROASではなく広告費とコンバージョン数で算出するCPAによる効果測定をおすすめします。

ROASを改善させる6つのポイント

 ROASで算出した広告の費用対効果を高める重要点は、主に以下の6つです。

  1. ターゲティング設定の見直し
  2. CVRの向上
  3. リピート購入の促進
  4. 購入単価を上げる
  5. 広告配信方法の改善
  6. 広告の分析・改善を継続的に実施する

 各項目について、具体的に解説します。

1. ターゲティング設定の見直し

 広告のターゲティング設定が適切でないと、コンバージョンが期待できないユーザーに向けて広告が掲載される場合もあります。その場合、結果としてROASが低くなってしまいます。広告のターゲティング設定が自社の商品・サービスに合致しているかどうかを確認して、適切な設定を行うことが重要です。

2. CVRの向上

 CVR(Conversion Rate)とは、広告へのアクセス総数の中でコンバージョンに至った率を示す指標です。CVRの向上によって売上が増加する機会が増加すれば、ROASの改善につながります。CVRの算出には、以下の計算式を用います。

・CVR(%) = コンバージョン数 ÷ サイト訪問数 × 100

 CVRを向上させるには、ランディングページやユーザーへの行動喚起方法の改善が有効です。

3. リピート購入の促進

 自社の商品・サービスを繰り返し購入するユーザーが増えれば、広告費を抑えて売上を向上できます。クーポンやポイントの付与や、関連商品を紹介するメルマガの配信といった施策によって、リピート購入の促進に取り組むことをおすすめします。リピート購入が増加すると、ROASの改善が見込まれます。

4. 購入単価を上げる

 1回の取引で顧客が支払う購入単価の向上は、ROASの改善に直結します。セット購入の促進や付加サービスの拡充などが、購入単価を上げる代表的な施策です。

5. 広告配信方法の改善

 Web広告の配信先には、検索エンジンやポータルサイト、SNSといったさまざまな種類があります。配信先の安全性や商品との相性を検討した上で、ブランド毀損のリスクのない効果的な広告配信を行いましょう。安全性や信頼性が高く、広告の効果も出ている配信先への予算配分を高めることで、ROASを改善できます。

6. 広告の分析・改善を継続的に実施する

 Web広告には、広告の効果を数値で確認できるメリットがあります。ROASを向上させるには、定期的に広告の効果測定を実施し、分析と改善を行う必要があるのです。広告の効果分析と改善を繰り返すことが、広告運用の最適化につながります。自社や商品のブランドセーフティ保持やアドフラウド対策を考慮した、安全で効果的な広告運用に取り組んでROASを向上させましょう。

ROASの改善に役立つおすすめツール5選

 ROASの改善に役立つ、おすすめツール5つを紹介します。

  1. Google アナリティクス
  2. Google Search Console
  3. Googleオプティマイズ
  4. HubSpot CRM
  5. HYTRA ANALYTICS

 それぞれのツールの主な特徴や機能について、以下に説明します。

1. Google アナリティクス

 Google アナリティクスは、Web広告やサイト、アプリなどのパフォーマンスを測定・分析できる無料ツールです。
 自社のWebメディアや広告に関連するユーザーの行動を多角的に測定・分析し、マーケティング戦略立案や広告運用改善に役立つ各種データを収集できます。Googleの機械学習モデルを使ったユーザー行動予測、ユーザーの行動に関連する変更点や傾向の自動検出などの機能を備えています。

Google アナリティクスの公式サイト

2. Google Search Console

 Google Search Consoleは、Webサイトの検索トラフィックやGoogle検索結果ページ上の掲載順位などを測定できる無料ツールです。ユーザーのサイトへのアクセス状況を測定して、Google検索でのインプレッション数やクリック数を分析できます。サイト上の問題の検出・メール通知や、ページ別のクロールやインデックス登録状況を確認するURL検査といった機能を利用できます。

Google Search Consoleの公式サイト

3. Google オプティマイズ

 Google オプティマイズは、Webサイトの改善に役立つ各種テストを実施できる無料ツールです。簡単な操作でサイト内のコンテンツをテストして、サイト改善の重要点を絞り込むことができます。A/Bテストや多変量テスト、リダイレクトテストなどが実施可能です。

Google オプティマイズの公式サイト

4. HubSpot CRM

 HubSpot CRMは、マーケティングやコンテンツ管理、カスタマーサービスなどに活用できる、CRMツールです。ユーザーを自社サイトに集めるマーケティング関連の機能やWebコンテンツの作成を支援するCMS機能などを豊富に備えています。

HubSpot CRMの公式サイト

5. HYTRA ANALYTICS

 HYTRA ANALYTICSは、Web広告のリスクを可視化するメディアチェックツールです。ブランドセーフティの観点から自動的にスコアリングを実施して、Webメディアや広告掲載面の審査を効率的に行います。過去のデータを解析したリスクレポートに基づいて、アドフラウド対策やブランドセーフティ施策を簡単に実施できます。

HYTRA ANALYTICSの公式サイト

ROASを活用して安全で効果的なWeb広告運用を実現しましょう

 本記事では、広告の費用対効果を測定する指標であるROASについて、定義や計算方法、類似指標との相違点、利用するメリット・デメリット、ROASの改善方法といった重要点を紹介しました。ROASを活用してWeb広告の最適化を実現させるために、効果的で安全な広告運用方法を具体的に検討してください。

ぜひ、アドベリフィケーションの専門家集団であるMomentumにご相談ください。
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