改正薬機法施行によるインターネット広告の変化とは?

恩田基輝
2021-08-02
目次

 8月1日、改正医薬品医療機器法(以下、薬機法)が施行されました。改正薬機法の大きなポイントは、「課徴金」の導入です。この変更はインターネット広告にどのような影響を与えるのでしょうか?先んじて課徴金が導入されている景表法の事例をみながら考えてみます。そのうえで、広告主や代理店、アドプラットフォームがどのような対応をすべきか、見通しておきましょう。

改正薬機法とは

 まず、今回の薬機法改正のポイントは、「課徴金」です。課徴金とはなんでしょうか。
これまでも、法律上では薬機法違反をした場合には最大200万円の罰金を科すことが可能でした。しかし、その抑止力については疑問の声が上がっており、実際、薬機法に違反した広告がはびこっています。つまり、悪質な業者にとっては「万が一ばれたとしても売り上げのほうが大きいから大丈夫」という状態でした。

 課徴金とは、広告違反で得たと思われる利益に対して、最長過去3年さかのぼり、売り上げの4.5%の額が徴収されます。課徴金の額が225万未満(売上5000万円未満)の場合は納付命令の対象から外れるとのことですが、最大金額はありません。

 また、少し細かい話になりますが、課徴金の対象となるのは、薬機法第66条の「虚偽誇大広告の禁止」であり、薬機法第68条の「承認前医薬品等の広告の禁止」ではありません。つまり、未承認のサプリなどが広告で効能を謳っている場合、まずは68条の「承認前医薬品等の広告の禁止」違反になり、それだけでは課徴金の対象とはなりません。その効能の根拠がなく、虚偽の場合66条の「虚偽誇大広告の禁止」に違反したと認められた場合、課徴金の対象となります。

 さて、この改正薬機法が、どれだけ抑止力を含めた効果を持つのでしょうか。

景品表示法の課徴金事例

 課徴金は景品表示法にてすでに導入されています。直近の課徴金納付命令を見てみましょう。

 ここ1ヶ月だけで3件ほど出ていますね。特に、ユニクエストは1億円以上の課徴金納付命令を出されており、衝撃的な額と言えます。

これからのインターネット広告

 課徴金は「虚偽誇大広告からの売上」に対して課されるものなので、「虚偽誇大広告」から利益を得た企業は広告代理店やプラットフォーマーに関しても、処分や課徴金の対象になる可能性があります。意図的に加担することはもちろん、知らずに虚偽誇大広告の片棒を担いでしまう危険性もあります。

 そもそも、ユーザーを騙して利益を得たり、広告表現でコンプレックスを刺激してお金を稼いだりしても、長期的な事業の成長にはつながりません。引きつづきコンプライアンスすれすれ、もしくは違反しているより過激な手法に走り、いつか自滅するのがオチです。また、インターネット広告全体としてユーザーからの信頼が(ますます)無くなり、誰も得しません。

  最近は、アドネットワーク事業社が自社の広告審査基準を見直すような動きがあります。インターネット広告全体を健全化し、ユーザーにとって最低限、「不快でない・嘘ではない」という環境を作っていくことが大切だと思われます。その先に、さらなるインターネット広告の発展が見込め、長期的な成長が可能になります。我々Momentumとしても、広告の健全化について尽力している最中です。もしご興味がある方は、お問い合わせください。

参考記事

厚生労働省「課徴金制度の導入について」:https://www.mhlw.go.jp/content/000609186.pdf

 

 

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