【事例付き】ネットとリアルが交錯する新しいデジタルマーケティング戦略「O2O」「OMO」とは?

恩田基輝
2021-11-24
目次

 ネットでのビジネス、というと一般的にはECを考えてしまうかもしれませんが、近年ではユーザーにネットとリアルを行き来させ、新しい体験や価値を創出するビジネスモデルが注目されつつあります。その代表的なものが「O2O」「OMO」と呼ばれる手法です。

 どのようなビジネスなのか、具体例とともにみていきましょう。


SNS時代のビジネススタイル「O2O」「OMO」

「O2O」は「Online to Offline」の略で、オンライン上のサービスをきっかけにユーザーをオフライン(=実店舗)に導入する手法で

す。その逆も同じです(図1)。

 そして「OMO」は「Online Merges Offline」の略です。ユーザーが実店舗などオフラインの空間にいながらも、そこで同時にオンラインでのサービスを利用できることで、オンラインだけ、あるいはオフラインだけでは不可能だった新たな「体験」を提供するものです。

 

図1 O2OとOMOのイメージ
(出所:「O2O及びOMOの現状に関する調査研究報告書」総務省資料)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r02_08_houkoku.pdf p4

 上の図でのOMOのイメージは、ショッピングセンターの場合だとわかりやすいでしょう。店舗で洋服などを購入後、帰りに同じ施設内で飲食した場合、飲食店でも買い物を続けられるようQRコードつきのカタログを設置しておく、といった手法が考えられます。

 例えば、試着はしたがその場で購入を決められなかった商品があったとして、しかし食事中に「やっぱり買おう」と思い直したら、その場でECサイトにアクセスできるような仕組みです。「ちょっとの迷いも逃さない」という意味では、徹底した包囲網と言えるかもしれません。


O2O、OMOの導入事例

 このようなオンライン・オフライン連携のユニークなサービス展開について、国内での事例をご紹介します。

・店舗で体験、自宅で購入

 ひとつは、ニトリです。独自開発のアプリには様々な機能が搭載されています。

 例えば、気になるインテリアの写真から、似たニトリ商品を探すことができる「カメラdeサーチ」はネットから実店舗にユーザーを呼び込む機会を作ります。「サイズwithメモ」機能では、店頭で商品の撮影をするとARメジャーによってサイズ計測ができ、サイズを記録して自宅に帰り、合えば自宅からECで商品を購入できるというしくみです。

 これには、店舗の都市部への展開とも関わりがあります。というのは、都心にある店舗へのアクセスは、公共交通機関が中心になります。店頭で商品を選び、自宅配送を求める顧客が当然多くなりますが、その段階で何かと手間がかかってしまいます。宅配の場合は店舗ではなく倉庫から商品が出荷されるため、顧客がレジまで持ってきた商品をまた陳列棚に戻す、といった作業負担もありました。これらの問題を解消するという、マーケティングに限らない効果も生まれているのです。

 

・アプリで顧客の行動に関する情報を収集

 オリジナルアプリでOMOを促進しているもうひとつの事例がパルコです。

 パルコのアプリ「POCKET PARCO」には、ユーザーに特別なサービスを提供しつつ、パルコ側としてはデータ収集の重要なツールになっている点が特徴的です。代表的機能として下のようなものがあります(図2)。


図2 パルコ「POCKET PARCO」の機能概要
(出所:「O2O及びOMOの現状に関する調査研究報告書」総務省資料)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r02_08_houkoku.pdf p14

 いずれもユーザーには「ポイント付与」という特典があります。なかでも「WALKING」は画期的な機能でしょう。顧客の行動もそうですが、施設内を多く歩いてもらうことで多数のテナントが目にとまります。施設に入店した顧客に、単独の目的だけでなく施設内をくまなく歩いてもらうことで、施設全体の広告効果を持つことになります。

 

「売らない店」という新概念へ

 OMOという「場」を提供することじたいをビジネス化している企業もあります。東京都内に3店舗を構える「b8ta(ベータ)」は「RaaS(=リテール・アズ・ア・サービス)」という新概念を披露しています。b8taの「店内」には、コスメや食品、家電、ガジェット、といった様々な「商品」が並んでいます。車までもが展示されています(図3、4)。

図3、4 「b8ta Tokyo-Shibuya」店内
(出所:「売らない小売のパイオニア、b8ta Japanの新店舗『b8ta Tokyo - Shibuya』の内部を初公開」)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000053185.html

 b8taのコンセプトは、「売らない店」です。実店舗でありながらそこでモノを販売するわけではありません。どういうことかというと、メーカーが新商品などについて「店頭に並べるにはコストがかかる」「広告が効いているか知りたい」「この商品はそもそも興味を持ってもらえるのか」という調査を実施する場所を提供しているのがb8taという形になっているのです。顧客は実際の商品と、隣に置かれたタブレットで情報を得ることができます。

 そして、メーカーと顧客双方にメリットをもたらしています。まず、顧客は「いきなりネットで商品を買う」のではなく、b8taの「実店舗」で商品を手に取って、試して、購入したければその場でECサイトで注文ができるという仕組みです。また、知らなかった新商品に出会い、手に取ることができるという「体験」を提供する場所でもあります。また、メーカーにとっては、省スペースで商品を試してもらう機会・場所を作ることができます。また、b8taの店内で、実際に商品を手にした顧客からの感想を得ることもできるのです。売上はメーカーに100%バックされます。b8taは、メーカーから出品費用を月額で徴収することで利益を得る、という全く新しいビジネスモデルなのです。

 

データドリブンの時代、オンラインとオフラインの融合を

 これらO2O、OMOといった手法、特にOMOはユーザーにとっても商品探しやレジ待ちが省かれるというメリットが大きいうえ、事業者にとっては効率だけでなく収集できるデータが増えるという点が特徴的です(図5)。

 

図5 OMOの事業者メリット
(出所:「O2O及びOMOの現状に関する調査研究報告書」総務省資料)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r02_08_houkoku.pdf p24

 

 実店舗で得られるデータは、POSが中心でした。しかし、店舗を離れた後や来店前に消費者が考えていることやその行動は全く読めなかったというのが実情でしょう。しかし、OMOによって多くの接点を持つことで、顧客心理や店舗外での行動を知ることができるようになるのです。

 顧客の行動や潜在ニーズを知る上でデータドリブンが必要とされる時代にあって、無理矢理アンケートに答えさせたりすることなく、むしろユーザーにメリットを還元しながら事業者は自然な形でデータを収集できるというのがOMOのメリットです。

 また、新型コロナの流行で実店舗は長期間厳しい経営を迫られました。今後、こうした危機はどのような形でやってくるかわかりません。
あらゆるチャネルでビジネスを継続するためにも、オンラインとオフラインの融合は必須と言えるでしょう。

 

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