2020年7月に薬機法違反で広告主と広告代理店担当者が逮捕される「ステラ漢方事件」という事件がありました。この事件をきっかけとして、これまでアフィリエイト広告に指摘され続けた問題点が表出し、行政の取り締まりも厳しくなっています。消費者庁は2020年12月にアフィリエイト広告関連事業者への立ち入り調査などを行い、2022年にはアフィリエイト広告に関するガイドラインを出そうとしています。
「ステラ漢方事件」だけではなく、世間ではアフィリエイト広告をどこか怪しい広告手法と見なしている風潮があります。では、一体アフィリエイト広告の問題点とはどのようなものなのでしょうか?
方法とは?
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アフィリエイト広告の問題点
こちらの記事では、「大阪府警、ASPを捜査か<アドネットの闇> 重くなるウェブ広告関与の『代償』」と題し、アフィリエイト広告について解説しています。簡単に記事内容をまとめます。
記事内では「あらたなメディア支配の構造」としてアドネットワークの仕組みを企業名を上げて説明しています。アドネットワークは、あくまで広告主に広告掲載を依頼された「仲介者」であるがゆえ醸成されづらい「遵法意識」に問題の本質があることを指摘しています。その結果として、本来は「違反の蓋然性が高い広告」を水際で止めるべき配信事業社の「審査がザル」になってしまい、ユーザーのクリックを引き起こすための過激な表現が増え、「薬機法や景品表示法の観点から問題のある広告が大量に垂れ流されている」状態である、としています。
また、記事の最後に、逮捕された代理店も加盟していたJARO(日本広告審査機構)の専務に対してインタビューを行っています。インタビュー自体は、「JAROの領域は広告・表示の適正化」であり、個々の事業者の広告審査を適正化するものではないというJAROのスタンスを明確回答してから淡々と進んでいくものの、『構造改革「業務の範囲外」、適正化は「個々の事業者の責任」』という小見出しがついているためか、「ステラ漢方事件」以後もインターネット広告の構造的な問題が対策されず放置されている印象のまま、記事は終わります。
アフィリエイト広告の「闇」について
本ブログでフォーカスしたいのは、記事タイトルにある「ASP」についてです。ここでいうASPとは、Affiliate Service Provider(アフィリエイトサービスプロバイダ)の略で、広告主とアフィリエイターをつなぎ、アフィリエイト広告配信の仕組みを提供する機能を持っています。件の「ステラ漢方事件」もアフィリエイト広告が利用されていました。先ほど記事では、大阪府警がASPに対し家宅捜索を行っていることのみタイトルに記載されており、なにが問題になっているかは明らかにされておりません。ただ、アドネットワークとアフィリエイトは異なる仕組みで動いていますので、アドネットの闇=アフィリエイトの闇ではありません。
そこで、本記事では、アフィリエイト広告業界の問題点を明確にし、どんなものかわからぬ「闇」ではなく、解決可能な「課題」として設定したいと思います。
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アフィリエイト広告市場について
まず、アフィリエイト広告のマーケットを確認しておきましょう。2021年度の市場規模は、およそ3,500億円で、2025年までにおよそ5,000年億円の市場になると予想されています(※1)。コロナ禍でも市場自体は拡大傾向にあり、今後も伸びていくと思われます。
拡大要因としてはいくつか予想されますが、主に下記だと思われます。
- そもそもインターネット広告全体の予算が増加しているため、比例してアフィリエイト広告に投下される予算も増えている。
- コロナ禍により、事業者はより厳しいマーケティング迫られることになり、費用対効果が見やすい成果報酬型の広告手法が採用されやすい。
- 生活様式の変化により、EC市場の活性化が見込まれる。EC市場とアフィリエイト広告は相性が良く、活発な利用が想定される。
また、最近では、アフィリエイトメディアが拡大していることも市場伸長の要因と見なされています。つまり、これまではブログや比較記事、法人運営のメディアが成果報酬地点でしたが、最近ではSNSや動画メディア、さらにはライブコマースなどもアフィリエイトメディアとして活用されています。換言すると、インフルエンサーがインスタグラムやYouTube、ライブ配信プラットフォーム上で商品を紹介し、そこから購買などが発生すると、そのインフルエンサーに成果報酬が入ることになります。
メディアの多様化とオンライン決済は、アフィリエイト広告にとって追い風になるでしょう。
一方でネガティブなニュースも
一方で、ネガティブなニュースが目立つ業界でもあります。
- 2020年 7月 薬機法違反で広告主と担当代理店の担当者が逮捕(ステラ漢方事件)
- 2020年12月 JAROの2020年上半期の審査状況発表。「厳重警告」「警告」計12件のうち、アフィリエイト広告が関わる事例が11件を占める。
- 2020年12月 消費者庁がアフィリエイト広告関連企業の大規模調査へ
JAROの2020年上半期の審査結果のうち、最も重い「厳重警告」の内容を見ていくと、景品表示法違反や化粧品や医薬品の効能に関する薬機法違反、また、「定期購入」という契約条件を意図的に分かりづらくしているものが列挙されています。
厳重警告
(1) 「飲むだけでみるみる痩せる」とうたっているが、アフィリエイトサイトで痩身の根拠として掲載されたのは人工肛門の論文を加工したと思われるものであり、「初回限定価格500円」は5回購入が条件であり、表示が分かりにくいものだった。(健康食品/インターネット〔アフィリエイトサイト、自社通販サイト〕)
(2) ポータルサイトのインフィード広告からリンクした口コミサイトに「特許成分の○○なら10分で体の中から消臭」「今だけ500円」などとうたっていた。(健康食品/インターネット〔ポータルサイトインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〕)
(3) 広告やアフィリエイトサイトなどで、「ステロイド頼りだったアトピーがせっけんを変えただけで?」などとアトピーに効くような内容をうたっていた。(せっけん〔化粧品〕/インターネット〔ニュースサイトインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〕)
(4) 「飲むだけなのにマッサージの9倍もの脚痩せ効果!」「初回10円」と動画広告で言っていたが、同梱の請求明細書に16100円と書かれていた。(健康商品/インターネット〔動画共有サイトのアフィリエイト広告、自社通販サイト〕)(5) 上記(4)と同じ事例で、動画広告制作・運営事業者宛のもの。
いくつか例を挙げましたが、全て「広告」の問題です。アフィリエイト広告に限らず、ユーザーにとって不利益なことが起こるような広告が出てしまう広告主(及び広告を制作する代理店)のモラルの問題があります。
もちろんインターネット広告業界としてこのような問題を放置しているわけではありません。例えば大手プラットフォームのYahoo!は広告審査の基準を随時見直しています。2020年上半期の広告審査レポートをみると、健康食品などの「定期購入」に関する基準を厳格化し、ユーザーにとって不利益が発生するような広告を非承認としています。その結果、2019年下半期は157,502件であった不当表示による非承認件数が、2020年上半期は628,384件と約4倍になっています。
アフィリエイト広告の「課題」
では、アフィリエイト広告の課題とはなんでしょうか?
アフィリエイト広告の明確な課題として、商品やサービスを紹介する記事やブログ、もしくは誘導先のLPの管理が難しい、という点が挙げられます。広告を掲出する時点で、広告主が作成したクリエイティブはASPの審査を受けますし、アフィリエイターが作成したコンテンツは、ASPや広告主のチェックを経ます。ただ、すべてのコンテンツをチェックできるわけではありません。
成果報酬型広告のため、アフィリエイターは成果が発生するように記事やブログコンテンツの内容を更新していきます。SEO対策やクリック誘導はもちろんのこと、紹介する文言など、細かい修正は多々行われていますが、それらの変化すべてを広告主やASPが検知することがそもそも困難であり、そのうえで、表現や使われている画像を審査することは工数上不可能です。その中で、一部のアフィリエイターが、成果報酬をあげるためにコンテンツを過激化し、薬機法や景表法、著作権法で定められている範囲を超えてしまうことがあります。ここがアフィリエイト広告の「課題」です。この課題は成果報酬というアフィリエイト広告の構造と絡み合っており、一朝一夕で解決できる問題ではありません。
この課題に対して、アフィリエイト広告業界も何もしていない訳ではありません。すでに個別に対応しているASPももちろんあります。ただ、一部の企業により不正が行われ、ネガティブなニュースが取り上げられているのも事実です。今後、より業界的なレギュレーションなどが厳格化され、ASPの役務やポリシーが見直されていくと思います。先んじて、現状アフィリエイト広告に関連するアドベリフィケーションのサービスをご紹介します。
・アフィリエイト広告のアドベリ関連のサービスまとめ
- GMO NIKKO TRUE アフィリエイト
GMO NIKKOは広告主を対象に、URLごとのブランドセーフティ判定のサービスを提供しています。詳しい内容はこちらをご確認ください。広告掲載面として不適切なサイトを事前に防げるほか、NGカテゴリやNGワードの設定もできるようです。
- SPIDER LABS
アフィリエイト業界に特化しているわけではありませんが、アドフラウドを含むIVTを検知することが可能な「Spider AF」はインタースペース様などに利用されています。詳しい内容はこちら。
ログデータを解析し、不正なクリックをあぶりだすことができるようです。
- Momentum
Momentumでも既に大手ASPのバリューコマース様にURL単位のブランド毀損リスクスコアリングサービスを提供しております。今後もアフィリエイト業界の持続的な発展を支援するために協業を行ってまいります。
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※1:https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP628154_R10C22A3000000/