はじめに
2022年11月30日、定期的に調査している「アドベリフィケーション意識調査」を公開しました。当初はMomentum単独で調査を行いレポートを作成していましたが、前回の調査から、より広く読んでいただくために、電通デジタル様と共同で調査を行い、アドベリフィケーション推進協議会サイトにてレポートを公開しています。本記事では、レポートを一部抜粋して要約したプレスリリースや、調査レポート本文に収まらなかった、調査の背景や狙い、細かい調査結果を解説していきます。レポートは下記リンクより無料で公開しておりますので、ぜひご覧ください。どちらの記事を先に読んでいただいても構いません。
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レポートを一部抜粋した要約版はこちら
約5割の広告主がウェブ広告のブランドセーフティ対策を重視
-モメンタムと電通デジタル、アドベリフィケーション意識調査2022を発表-
「アドベリフィケーション意識調査2022レポート」全文はこちら
https://ad-veri.jp/whitepaper-2022.html
これまでの調査
アドベリフィケーション意識調査2018
簡単に、これまでの日本でのアドベリフィケーションの受容を振り返ります。海外も含めIVTなどの問題自体が業界内で認知されていたのは2011年くらいからですが、このインターネット広告の透明性の問題が広く認知されたのは2017年の初めのマーク・プリチャードの演説がきっかけです。その後、日本で、いわゆる「ネット広告の闇」というキーワードと共にインターネット広告のリスクが広く認知され始めたのは2018年のごろ。Momentumがアドベリフィケーションの意識調査を公開したのも2018年の年末です。2017年にも調査はおこなっていますが、レポートとして公開したのは2018年が初です。当初は上場企業の広告主のみを対象にしていました。
2018年に公開したアドベリフィケーション意識調査はこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000011681.html
この時の認知率(「名称も内容も知っている」+「名称は知っているが内容は知らない」)は、「ブランドセーフティ」が58.2%、「アドベリフィケーション」が31.9%です。対策率は20%に達していないくらいです。2017年の調査から認知率は大幅にアップしているものの、対策はこれから、という企業が多い結果になっています。
認知率-2018年
実施率-2018年
アドベリフィケーション意識調査2020
2019年は調査を実施せず、その次は2020年の2月に調査を行なっています。また、この年の6月に初めて広告代理店(エージェンシー)を対象にして同様の調査を行なっています。日本は海外と広告業界の産業構造が異なり、メディアプランニングやクリエイティブ作成において広告代理店が大きな役割を果たしています。エージェンシーへ調査を行なった背景としては、アドベリフィケーションにおいても、その実行や対策を担う広告代理店が重要になっていると考えたためです。
アドバタイザー意識調査2020はこちら
https://blog.m0mentum.co.jp/research.advertiserエージェンシー意識調査2020はこちら
https://blog.m0mentum.co.jp/adverification_in_agency
調査結果を簡単にまとめると、下記の通りです。
・アドバタイザーは2018年から認知率が増加。特に、「名称は知っているが内容は知らない」という層が増え、全てのキーワードで認知率が50%を超える。
・2018年から、アドバタイザーの対策率が2~3倍になり、40%を超える。
・エージェンシーは売上規模によって、認知率が大幅に異なることが明らかに。大規模代理店は認知率が全てのキーワードで60%前後。ただし小規模になると、認知率が30%を下回る。
エージェンシー認知率(規模別)-2020年
アドベリフィケーション意識調査2021・2022
さて、では2021年と2022年に発表した意識調査レポートを見ていきます。2021年の調査から、以下の点が変更されています。
・アドバタイザーは上場企業だけではなく、未上場の企業も対象に(つまりすべてのアドバタイザーが対象に)。
・広告配信事業者(プラットフォーマー)も意識調査の対象に。
つまり、上場の有無に関わらず、インターネット広告の出稿から配信に関わる事業者の全てを意識調査の対象にしました。また、この調査から、アドベリフィケーションが海外ほど浸透しない理由としてよく話題に上がっていた「コストは誰が負担するんだ問題」に関しても調査を行なっています。
さらに、イントロダクションにもある通り、2021年にJICDAQ(一般社団法人デジタル広告品質認証機構)の設立はアドベリフィケーション業界にとって大きいニュースでした。ただ、前回2021年のアドベリフィケーション意識調査は2021年6月に実施しており、JICDAQが設立されてまだ2ヶ月ほどだったため、その影響度は測れていません。JICDAQの認定事業者の公開もまだ始まっていなかったはずです。2022年8月に実施した今回の調査と比較して、改めてその影響力が測れると考えています。
改めてになりますが、リンクを掲載しておきます。
レポートを一部抜粋した要約版はこちら
約5割の広告主がウェブ広告のブランドセーフティ対策を重視
-モメンタムと電通デジタル、アドベリフィケーション意識調査2022を発表-
「アドベリフィケーション意識調査2022レポート」全文はこちら
https://ad-veri.jp/whitepaper-2022.html
サマリ引用しておきます
1.アドベリフィケーション対策を実施してポジティブな効果を感じている事業者が増加
アドベリフィケーションへの認知率・対策実施率は、プラットフォーマー、エージェンシー、アドバタイザーの順に高く、全体傾向としては、昨年からの大きな変化はありませんでした。事業規模別で見ると、売上が高い事業者ほど認知率・対策実施率が高い傾向にありましたが、プラットフォーマーにおいては規模に関わらず対策が行われていることがわかりました。対策を実施した事業者へその効果を聞いた設問では、「特に効果は出ていない」という回答が最大7.6ポイント減り、ポジティブな効果を得たと感じる事業者が増加したことがうかがわれます。
2.JIQDAQ設立の影響により大規模アドバタイザーの意識が変化
年商200億円を超える大規模アドバタイザーでは、認知率と対策実施率が増加するだけではなく、「アドベリフィケーションを取引の条件に入れている」と回答した割合も昨年より15%増加し、45%を超えています。アドベリフィケーションへの問題を認知しながらも、これまでリスク対策に足踏みしていた特に大企業にとって、JICDAQ設立が後押しした結果といえるでしょう。
3.アドベリフィケーションツールを活用した個別の対策が活性化
アドバタイザーのアドベリフィケーション対策として昨年比で最も伸長率が大きかった対策内容は、ブランドセーフティにおける「サードパーティデータを活用した指定ドメイン、URLリストの活用」で昨年の約2倍、またPre-Bid、Post-Bidの利用も、全てのカテゴリにおいて増加傾向がありました。これらの対策は、アドベリフィケーションツールベンダーが提供する専用ツールを利用するもので、各社が本格的な対応に取り組み始めていることがうかがわれます。さらに、基礎的な対策である「自社作成の配信指定ドメイン、URLリストの活用」が最も対策内容としては多く、昨年比でも増加してることから、業界全体での意識の高まりが示唆されます。
詳しい内容についてはぜひ意識調査のサマリ版などをご覧ください。年々認知率上がってきており、対策の内容も変化し、対策の結果も良いと感じている方が増えていることがお分かりになると思います。
≫≫ アドベリフィケーション対策ツールの導入メリットとデメリットを徹底解説
ここ5年でどう変わったのか?
では、2017年から2022年の5年でどう変わったのでしょうか。アドバタイザーの認知率と実施率を比較してみたいと思います。前述しましたが、2017年の段階では上場企業だけが調査対象だったので、2022年の大規模アドバタイザーと比較することにします。
Q.あなたは、デジタル広告配信における「アドベリフィケーション」や、「ブランドセーフティ」「アドフラウド」「ビューアビリティ」といったキーワードをご存知ですか。ご自身に最も近いものをそれぞれお選びください。
アドベリフィケーション | ブランドセーフティ | アドフラウド | ビューアビリティ | |||||
2017 | 2022 | 2017 | 2022 | 2017 | 2022 | 2017 | 2022 | |
名称も内容も知っている | 12% | 32.95% | 14% | 35.23% | 5% | 34.09% | 10% | 34.09% |
名称は知っているが内容は知らない | 6% | 10.23% | 12% | 31.82% | 13% | 14.77% | 10% | 19.32% |
名称も内容も知らない | 82% | 56.82% | 74% | 32.95% | 82% | 51.14% | 80% | 46.59% |
調査方法や調査会社も異なるため、参考程度の比較になりますが、20%くらいだった認知率が大体半分くらいになっています。「もう半分か」なのか「まだ半分か」なのかは正直微妙なところですが、とりあえず半分まできたな、というのがアドベリ企業のマーケティング担当の感想です。
対策率も見てみましょう。
Q.自社のデジタル広告配信の対策としてそれぞれあてはまるものをお答えください。※単一回答
ブランドセーフティ | アドフラウド | ビューアビリティ | ||||
2017 | 2022 | 2017 | 2022 | 2017 | 2022 | |
対策をとっている。またはとったことがあり、今後も対策をとっていきたい | 13% | 57.95% | 10% | 42.05% | 13% | 39.77% |
対策をとっている。またはとったことがあるが、今後は対策をとりたいと思わない | 2% | 1.14% | 5% | 5.68% | 0% | 6.82% |
対策をとっていないが、今後対策をとっていきたい | 14% | 9.09% | 14% | 13.64% | 15% | 11.36% |
対策をとっていないし、今後も対策をとりたいと思わない | 6% | 9.09% | 6% | 11.36% | 6% | 11.36% |
対策をとっているかどうか、わからない | 65% | 22.73% | 65% | 27.27% | 66% |
30.68% |
対策率も10%程度だったところから約45~60%まで上がっています。大規模アドバタイザーの中では、対策をとっている方が多いということが言えるかもしれません。
謎
さて、勘が良い方はここで気づくかもしれませんが、なぜか認知率より対策率の方が高い結果になっています。実は、今回の調査に限らず、2017年から毎回このような傾向があります。これはなぜなのでしょうか?
はっきりとした理由はわかりません。ただ、ここに日本の産業構造の特徴が表れている、と考えられます。つまり、日本ではアドバタイザーではなく、エージェンシーが広告プロモーションの主導権を握っているケースが大多数です。アドベリフィケーションに関しても、アドバタイザーはよく理解しないまま、エージェンシーやアドプラットフォーマー経由で対策をとっているかもしれない、ということです。
ここから様々なことが類推できます。例えば、日本で海外諸国よりアドベリフィケーションが浸透しない理由や、コスト誰持つんだ問題などです。また、このような問題はアドベリに限らず他の領域のサービスに関しても敷衍することができますが、深煎りすることは避けます。シンプルに、残っている課題を見ていきます。
残っている課題
詳しく見ていただけるとわかりますが、2021年から認知率と対策実施率の分布はそれほど変わっておりません。統計上、この二つの軸で見ると量的な変化はなかった、ということになります。もちろん、サマリの通り、一部アドバタイザーの対策内容や取引条件には変化があり、質的な変化は起こっていると推察できます。なので、残っている課題としては、まだアドベリフィケーションを認知していないアドバタイザーへのアプローチです。絶対数として多数を占めるであろう中小規模の広告主の6~7割はインターネット広告のリスクを認知しておらず、8割くらいはアドベリフィケーションの内容を理解していません。
ひとまず
ひとまず、上記のような課題を明らかにすることがこの調査の意義でもあります。「インターネット広告の健全化」を目指して、100%は不可能だとしても、認知率の比率が逆転するくらいを目指していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
意識調査に関するお問い合わせがあればこちらからお願いいたします。
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