「ブランドセーフティ」という言葉を聞いたことがあっても、正確に意味を理解できているという方は少ないかもしれません。また、どのように対策をすればよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ブランドセーフティの意味や重要性、対策方法、主要メディアのブランドセーフティへの取り組みなどを解説します。デジタル広告の運用改善に向けた取り組みの参考にしてください。
まずブランドセーフティの定義と重要性、ブランド毀損が生じるケースについて説明します。
デジタル広告上で取り組む「ブランドセーフティ」とは?
ブランドセーフティとは
ブランドセーフティ(brand safety)について、2つの広告関連団体は以下のように定義しています。
団体名 |
ブランドセーフティの定義 |
JIAA (日本インタラクティブ広告協会) |
広告掲載先の品質確保による広告主ブランドの安全性 |
JAA (日本アドバタイザーズ協会) |
ブランドを毀損する不適切なページやコンテンツに広告が表示されるリスクから、安全性を確保する取り組みのこと |
一般的には、公序良俗に反するコンテンツや、著作権・商標を侵害する不正コンテンツなどに広告が配信されることを防ぎ、ブランド毀損のリスクを回避する取り組みのことをブランドセーフティと呼びます。
ブランドセーフティが重要な理由
デジタル広告の普及によって、ブランドセーフティの必要性は急速に高まっています。
デジタル広告には、オフラインの広告と比べて手軽に広告を配信できるというメリットがある一方、どのメディア・サイトに広告が表示されているのか把握しにくいというデメリットもあります。
もし配信先のコンテンツに問題があると、広告主のブランドの価値やイメージが損なわれてしまうリスクが生じます。
実際のブランド毀損の事例として、2016年9月「AbemaTV」の中で、特定の政治団体が出演する番組が放送され、番組内の広告枠で「ユニリーバ・ジャパン」の広告が放送されました。その結果、視聴者からクレームを受け、SNSでも大きく炎上しました。ユニリーバ・ジャパンは、AbemaTVとの直接的な取引はなかったものの、広告代理店を通し、アドネットワークに対して広告の出稿停止を求めるという事態に発展しました。
企業や商品のブランドは長い期間をかけて築き上げられた重要なものです。万が一ブランドイメージを毀損してしまう面に広告を配信してしまった場合、広告を見た消費者が、広告主に対して良くないイメージを持ってしまったり、それがSNSで拡散されたりして風評被害を受けて売上や株価に影響するなどのリスクがあります。そのため、広告主や広告代理店だけでなく、広告の配信先である各メディア・プラットフォームもブランドセーフティのための対策を実施しています。
ブランド毀損が生じる2つのケース
デジタル広告の配信によってブランド毀損が生じるケースには、主に以下の2種類があります。
- 公序良俗に反するようなサイトやコンテンツへの広告配信
- コンテンツと広告のミスマッチ
1は、公序良俗に反するコンテンツや不正コンテンツに広告が掲載されるケースです。2は、災害や事故を伝えるニュースコンテンツに損害保険の広告が掲載されるようなケースで、配信先のコンテンツ自体ではなく広告主とのミスマッチによってブランド毀損のリスクが高まってしまうケースです。
広告主、代理店ができるブランドセーフティの対策の具体的な2つの方法
広告主や広告代理店が実施できる、ブランドセーフティ対策の具体的な方法を紹介します。
PMP(プライベートマーケットプレイス)の活用
PMP(プライベートマーケットプレイス)とは、限られた広告主とコンテンツの質が高い優良Webメディアだけで構成されたアドネットワークのことです。
信頼できるメディアだけに広告を配信できるため、ブランド毀損が生じるリスクを低減できます。
アドベリフィケーション対策ツールを使う
広告の検証・対応を行うアドベリフィケーションツールを導入することで、ブランドセーフティ対策を手軽に実施できます。
アドベリフィケーションツールのブランドセーフティ関連の機能には、主に以下の3つがあります。
- 配信推奨・非推奨リストの作成
- 広告費用の発生前に配信先をフィルタリングするPre-bid
- 広告配信後に問題のある配信先をブロックするPost-bid
利用できる機能は、ツールによって多種多様です。自社のデジタル広告の配信状況に最適なツールを選ぶことをおすすめします。
各メディアにおけるブランドセーフティの取り組み
代表的なWebメディアが独自に実践している、ブランドセーフティに関する施策を紹介します。
YouTubeにおけるブランドセーフティ
YouTubeでは、広告掲載に適したコンテンツに関するガイドラインを定めています。このガイドラインには、広告掲載の可否・制限に関するルールが示されています。
また、YouTubeの定めるポリシーに違反するコンテンツの視聴割合調査が2017年に開始されました。2017年と2020年の同4半期の比較では、違反コンテンツ視聴の割合は7割以上減少したと発表されています。
Facebookにおけるブランドセーフティ
Facebookでは、独自のコミュニティ規定を設け、規定に違反する有害なコンテンツを削除するための事前検知技術を導入しています。コミュニティ規定に違反するコンテンツを適切に審査するために、35,000人以上のスタッフがコンテンツ審査をはじめとする安全・セキュリティに関する業務を担当しています。
また、広告主はブランドセーフティプロフィールの管理画面から、いつでも広告配信先の選択・除外を行うことができます。
Twitterにおけるブランドセーフティ
Twitterが定めるブランドセーフティに関するポリシーには、著作権・商標侵害やヘイト表現など、広告を配信するコンテンツに関する禁止事項が明記されています。広告主向けのブランドセーフティに関連する施策・機能も数多く提供されています。主な施策・機能には、以下の3つがあります。
- 広告配信に適したコンテンツを審査するAmplifyパブリッシャープログラム
- 設定した目的に応じた広告キャンペーンの最適化
- ユーザーの特性・タイプを選択して広告を配信するターゲティング機能
これらの施策・機能を複合的に利用することで、適切なブランドセーフティ対策を実施できます。
ブランドセーフティ対策と同時に実施すべきアドベリフィケーション対策
ブランドセーフティ対策と同時に、デジタル広告への不正行為を防ぐアドフラウド対策と、広告の視認性を高めるためのビューアビリティに関する施策を実施することで、広告の価値をより高めることが可能です。アドフラウドとビューアビリティに関する対策のポイントを、以下に説明します。
アドフラウド対策
アドフラウドとは、デジタル広告における不正行為や詐欺的な行為のことです。機械(ボット)による広告表示回数やクリック数の不当な水増しが代表例とされています。主なアドフラウド対策には、以下の3つがあります。
- 解析用タグによるユーザー行動のモニタリング
- 不正が疑われるサイトの非許可リスト作成
- アドベリフィケーション対策ツールの導入
アドフラウドを放置してしまうと、広告主が大きな損害を被ることになります。できるだけ早期に適切な対策を講じるべきです。
ビューアビリティに関する対策
ビューアビリティとは、インプレッション全体のうちユーザーが広告閲覧できる状態にあった比率を意味します。Webメディアの広告枠は、最初に表示された画面をスクロールしないと閲覧できないことがあり、広告を目にする前にユーザーが離脱する可能性が高くなってしまいます。
ビューアビリティ改善のための主な対策には、以下の4つがあります。
- 広告掲載箇所の見直し
- 広告サイズの調整
- 広告表示・読み込み速度の向上
- ユーザーの目にとまりやすい広告デザイン・手法の採用
デジタル広告の費用対効果を向上させるには、ビューアビリティを改善する対策が重要です。
まとめ
本記事では、ブランドセーフティの意味や重要性、具体的な対策方法などについて解説しました。適切なブランドセーフティ対策を検討し、安全で効果的な広告運用を実現してください。ブランドセーフティに関して、自社対応が困難な課題が生じた際には、アドベリフィケーションに精通した企業への相談をおすすめします。
参考
※1:https://blog.youtube/inside-youtube/building-greater-transparency-and-accountability/
※2:https://www.facebook.com/business/news/providing-more-clarity-and-controls-for-advertisers
※3:https://business.twitter.com/ja/help/ads-policies/brand-safety.html